県立矢吹病院(矢吹町)にある精神科子ども専門外来「児童思春期外来」の昨年度の延べ患者数は2270人で、過去最多を更新したことが県のまとめで分かった。県は、医師を増員して診察日を増やしたことや子どもを取り巻く問題の深刻化などが要因と分析。今後も患者数は増えると見込み、医療スタッフの増員などさらなる対応力の強化を急ぐ。
昨年度の患者数は前年度より839人増加。疾患別(複数回答)で見ると、注意欠陥多動性障害(ADHD)が857人と最多で不安神経症469人、広汎性発達障害(PDD)405人、神経症308人と続いた。年齢別では7〜12歳の1046人が最も多く、約半数を占めた。新規の患者数も218人(前年度比90人増)で過去最多となった。
患者数は同外来が開設された2011年8月以降、増え続けている。ADHDや発達障害などの精神疾患が認知されてきたことに加え、いじめや不登校など子どもを取り巻く問題も背景にあるとみられる。発達障害などを診察する医療機関は県内に47機関あるが、1人の診察に時間をかけるため、初診までに半年から1年程度かかる場合もある。
初診までの待機時間を短縮するため、矢吹病院は昨年度から精神科医や精神保健福祉士を増員し、診察日を増やした。さらに、初診までの間、臨床心理士や精神保健福祉士による事前面談で患者や家族を支援する独自の取り組みを実施。こうした効果で一時、待機時間が3カ月を切る時期もあったが、口コミで患者数が増え、現在は約3カ月待ちの状態という。
患者数の増加を踏まえ、県は19年度、事前支援に携わる心理判定員を3人から4人に増員することを検討。重篤患者を受け入れる子ども専門の精神科病棟の整備や、患者を地域で支える仕組みの構築にも力を入れる。県病院経営課は「投薬治療よりも患者の生活環境を整えることが重要。医療だけではなく、地域で患者を受け入れられる体制が必要」としている。